誰が野球離れを止めるのか

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野球人口の減少が嘆かれる昨今、子供の野球離れの要因としてよく耳にするのが「学童野球は旧態依然(昔からのやり方を変えず進歩や改善が無いさま)のチーム・指導者が多く、始めるハードルが高い」と言った声。

私はここ数年で学童野球に携わるようになったため”昔からのやり方”について調査してみると以下のような例が挙がりました。

  • 勝利至上主義
  • コーチによる理論のない自身の経験からの指導
  • 土日全日の練習
  • 怒声、罵声
  • お茶当番等保護者の負担
  • 用具(スパイク等)の色の統一

旧態と呼ばれるチームでは、選手個々の能力や体力を把握し練習メニューを作成していたり、信頼関係を築いているからこその怒声・その後のフォローが行えているチームがある一方(強いチームはそれができている事が多い。)強豪チームへの憧れか、根性論を振りかざし過度な投げ込みや素振り、コーチ自身の怒りに任せた罵声により、最悪のケースでは選手生命を断ってしまうような指導が常態化しているチームが多いように感じます。

自分の子供に野球を始めたいと言われたとき、どんなチームに入り、どんな未来にその経験を繋げてほしいと思いますか?

アークスジュニアというチーム

「自分の子供を預けたいと思うチームが近所に無いので、チームを作るしかないと思ってるんですよ。」取材等で親しくさせていただいているアークスリーグ(インタビュー参照)代表の中桐さんからそんな連絡がありお話を伺ったのが約2年前。

そこから3ヶ月ほどで練馬アークス・ジュニア・ベースボールクラブ(以下アークスジュニア)を立ち上げられていました。

アークスジュニア中桐代表

アークスジュニアには創設時より変わらない9つの約束があります。

  1. 週末練習1/4ルール
  2. 罵声や高圧的な指導を完全禁止
  3. 野球を「楽しむ」
  4. 理論に基づいた指導
  5. 父母会なし保護者の時間的負担一切なし
  6. 勝利至上主義の否定
  7. スポーツ障害防止
  8. ロジカルではない声出しは行わない
  9. 活動は休んでも構わない

これらは中桐さんが中学校で野球部に所属していた際、監督からの理不尽な罵声等パワハラ行為により体調を崩し、野球から離れてしまった経験を元に作成した方針です。

設立当初の様子 ほとんどが未経験からのスタートでした

野球はおもしろいスポーツなんだ。だから絶対に楽しんでほしい。そんな野球愛が感じられる活動がMLB選手の目に留まりTwitterで拡散されると、賛同の声と問い合わせが殺到しすぐに定員になってしまったそうです。

タブレットを使用し打撃フォームを確認します

指導者の条件

野球の指導者と聞くと華やかな経歴を持っているイメージがありますが、中桐さんは前述の通り中学から社会人になり25歳で草野球を始めるまで約10年間のブランクがあるため、選手への技術指導の際に「私はヘタなので見本になるかわからないですが、、」と前置きをした上で理論を説明する姿をよく見ます。

ルールに工夫を加え低学年から試合を楽しむことができます

フラットに物事を捉え、常に情報を収集し、勉強し続けられるのは、自身に驕るような”経験がない”と言う”経験”が活かされているように感じます。

誰しもが持つ自分だけの経験をどう利用し伝えるか。指導するのに必要なのは華やかな経歴ではなく、そんな思いなんだと気付かされました。

投球数をカウントしスポーツ障害の予防に努めます

アークスジュニアには経験豊富なスタッフも多く在籍しており、そんな中桐さんの姿を見て自身もチームを立ち上げようと選手ファーストの輪が広がりを見せています。

学童野球に選択肢を

このように、楽しむことを第一に考えるチームも年々増えてきているように感じます。
とはいえまだまだ地域も限られるうえ、そのどのチームも新規メンバー募集を停止せざるを得ないほどの人気。ニーズに対して全くチームが足りていない状況です。

自分の子供に野球を始めたいと言われたとき、どんなチームに入り、どんな未来にその経験を繋げてほしいと思いますか?

あなたが必要なそのチームを必要とする人が他にもいます。
野球人口の減少を嘆くだけでなく、理想の学童野球チームを作りませんか?

かくいう私は、今日もここで嘆くだけなのです。

取材協力:練馬アークス・ジュニア・ベースボールクラブ